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2010年2月27日 (土)

単独行の遭難対策 その4 気象遭難対策 (体感温度の算出含む)

 『平成20年中における山岳遭難の概況』(警察庁生活安全局地域課作成の報告書)を見ると気象遭難(悪天候と表現)は、2008年(平成20年)に12件(全遭難者1933人)、2007年に28件(全遭難者1808件)になっている。この統計からは、残念ながら単独行なのか?グループ(パーティー)なのか分からない。※この統計には、登山者だけではなく、山菜取り、渓流釣り、作業なども含まれている。

 この統計を見ると気象遭難は、道迷い(2008年は769件)に比べ少ないが現実的には存在する。また、昨年7月の北海道トムラウシでの遭難事故(事件?)は記憶に新しく、かつ日本山岳ガイド協会が、3月1日に最終報告書をサイト上で公開するらしい。そこで、単独行としての気象遭難対策を考える。

 先ず、あなたは天気にあわせて休みを自由に取れますか?多くはNoだと思う。来月の3連休に行くとか、ある予め決めた日程で計画を立て、天候が最悪でない限り、登山を決行するのではないだろうか?手間をかけて電車・宿泊先などの予約を行い、ちょっと天気が悪いくらいでキャンセルはしたくないし、そもそも休暇の変更を自由に出来ないなど理由は様々。結果的には、登山中3日連続雨で出勤したら雲一つ無い快晴とか。運良く3日連続快晴なら、読みが良かった、日ごろの行いがよいからで済ましているのではないだろうか。

 つまり、現実的には、天気より登山へ行くことが優先されているのである。そこには、気象予報士並の知識は明らかに不要である。また、ラジオを聴いて天気図を書くとか天気図を正確に読むレベルの知識も不要に近い。
 行くことが前提の計画では、気象に関する知識として必要なのは、登山入門書記載の最低限のレベル(10ページもない)でよいだろう(上を目指す方はご自由に)。その僅かなページの中で記される観天望気の知識(1から2ページ程度か)、これは現地で雲や風から天気を予想する方法で、これだけは最優先で覚えておきたい。

●気象遭難回避の為、天気をどう予想するか?
 では、登山する前に、気象遭難を避ける為に具体的に何をすればよいか?次の2点に絞られる(私は実践している)。
① 登山する地域の天気予報を1週間程度前から毎日必ず調べること。但し、単純に晴れとか雨だけではなく、「北東の風 後 南東の風 ##北部 では 後 南東の風 やや強く くもり 夕方 から 雪 波 1.5メートル 後 2メートル」等の解説に注意する。
気象庁のサイト
http://www.jma.go.jp/jp/yoho/

② 過去の天気を調べる(一応、手順は私の独自手法と思っている)
 完璧な天気予報は現在存在しない。そこで過去10年の気象条件(降水量、気温、風速など)を調査する。「過去10年間の最悪の気象に対応出来る装備であれば問題はない」の発想である。

 この過去の天気を調べることについて、「7月中旬に北海道の大雪山系へ行く」を想定して解説する。気象データは、気象庁のサイト
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=&prec_ch=&block_no=&block_ch=&year=&month=&day=&view=
から入手できる。
 先ず、『左側の都府県支庁を選択』をクリックする。地図が出るので北海道の『上川支庁』を選択する。1段詳細な地図が出た。ここで選ぶ場所によっては気温データなど全てのデータが揃っていない場合がある(例えば登山口の一つの層雲峡)。そこで、ここでは『旭川』を選んでみる。次に年月の選択。2009年、7月とする。更にデータの種類を選ぶ。『2009年7月の日ごとの値を表示』をクリックする。
 すると、日ごとの気圧、降水量、気温、湿度、風向・風速、日照時間、雪、天気概況が分かる。トムラウシの遭難があった昨年の7月16日、旭川では、1日の降雨量の合計4mm、気温は、平均16.7℃、最高21.2℃、最低12.8℃、風速は最大瞬間風速14mであったことが分かる。ここで2月23日のブログ「単独行の遭難対策 その3 低体温症対策」にも体感温度の算出方法を記したが、この方法で大雪山系での気温を推測してみる。
2000mとすれば、地上より-10℃からー12℃低い。風速が1mでー1℃とすればー14℃。故に推定体感温度は、地上の最低気温―標高換算―風速換算として計算すると、12.8℃-12℃―14℃≒-13℃になる。仮に無風でも零度に近い。
 では、過去に遡りこのような悪条件があったかを同様な手法で調べてみる。取り合えず、1日の降雨量の合計、最低気温、最大瞬間風速に絞って抽出する。風速については平均風速の方が現実的かも知れないが、「山の上は風が強い」ので最大瞬間風速としている。
・2009年7月
 19日69mm、10日10.1℃、9日15.4m。
・2008年7月
 11日26mm、2日11.4℃、4日12.8m
・2007年7月
 28日37mm、2日8.4℃、24日15.6m
・2006年7月
 17日62mm、1日10℃、25日15.2m
・2005年7月
 27日43.5mm、7日10.5℃、4日17.9m
・2004年7月
 9日20mm、2日8.4℃、26日11.7m
・2003年7月
 10日18mm、15日11.1℃、14日11.7m
・2002年7月
 11日47mm、11日12.1℃、13日10.5m
・2001年7月
 23日41m、6日10.7℃、11日11.2m
・2000年7月
 25日76mm、19日12.9℃、25日18.2m

 過去10年間の最悪条件をまとめると、一日の降雨量76mm、最低気温8.4℃、最大瞬間風速18.2mである。大雪山系の体感温度を推測すると8.4℃―12℃―18.2℃≒-22℃である。トムラウシの遭難時の推定体感温度が-13℃、過去10年の最悪条件下ではー22℃。よって、過去10年の最悪条件に対応出来る装備であれば遭難回避条件が整う。※当然装備だけではダメです。使う能力に加え、経験、知識、体力、気力が必要ありですよ。

●単独行としての対応
 単独行として、天気予報と過去の天気を調べてどう対応すべきか? ズバリ、自分の実力以上の状態であれば避けるのが賢明である。悪い予報が出ていれば、過去の天気で得られた最悪の気象条件に遭遇する可能性があるからだ。

 微妙な表現であるが、「行けそう」と判断した場合は、繰り返しになるが、過去の天気の調査結果を元に過去10年の最悪条件に対応出来る装備を用意すべきである。

 7月に大雪山系に行くならば、-22℃を想定する必要があると記した。但し、小屋やテント内は風が無いとすれば、-3.6℃≒-4℃と考えられる。故にシェラフは、この気温を対応したものを用意すれば間違えは少ない。

 次に行動中である。最大瞬間風速18.2m。気象用語的には『強い風』。このクラスの風だと歩けないか転倒のレベル(らしい)。故にそこに留まる可能性が高い。しかも、推定体感温度はー22℃。このような状態の風を感じたら、先ず転倒を避けるためにも即座に、その場で姿勢を出来るだけ低くしたい。しかも、極めて低い体感温度である。隙を見て、速やかな風が避けられる場所(物陰)へ移動しないと危険である。
 隙を見てとは何か?最大瞬間風速とは、最大風速を1日計測したときの最大値である。最大風速とは、10分間隔で測定した平均風速の中の最大値である。風は波のような変化がある。強風と弱風を繰り返し、何回かの繰り返し(回数は定まらない)の後に瞬間的な気象用語で言う『強い風』が発生する。これを観察しつつ少しでも速く風が避けられる安全そうな場所(物陰)へ移動したい。
 風を避けるような場所が無ければ、ツェルトへ入る手も考えられるが、気象用語で言う『強い風』だと恐らくはツェルトが飛ばされる可能性が高い。いや、ツェルトに限らずザックから着る物を出せば、煽られて飛ばされる可能性も高いだろう。ザックを風避けにして姿勢低くして風が弱くなるチャンスを待ち、着たり移動したりするのがよいかも知れないが、最適な対処策はその場で即座に判断するしかない。

 現実的に、最大風速は、最大瞬間風速の半分以下の場合が多い(2000年7月25日も平均風速1.5m最大風速5.5mであった)。最大瞬間風速が18.2mなら通常の歩行時は、9.1m以下を想定すればよい。すると大雪山系の行動中の最悪の推定体感温度は、-22℃ではなく8.4℃―12℃―9.1℃≒―13℃程度となる。これを目安にウエアを用意すれば問題ないだろう。そうは言ってもやはり風の強い日は、テントや小屋で停滞するのが望ましいと思う。

気象庁 風の強さと吹き方の定義
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html

 次に降雨量の合計が最大の日は、同じ2000年7月25日の76mm。かなり降っていることが分かる。この日の1時間の降雨量は、最大39.5mmである。気象庁のサイトによれば、気象用語では、30以上から50mm未満が『激しい雨』で、『道路が川のようになる』、『高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)』と記されている。

気象庁 雨の強さと降り方の定義
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html

 恐らくは、山中なら歩く気力すらなくなるレベルだろう。速やかに安全な場所へ避難するしかない。もし、風も吹いている状態であれば、テントや小屋で停滞するのが望ましいと思う。
風速を体感温度に換算することは、正確さは別にして可能であるが、降雨量を体感温度に換算(数値化)する手法は無いようである(ネットで検索する限り)。水と風は、冷風器の状態なので体感温度は確実に下がる筈だし、低体温症の予防としても「濡らさない」が基本である。しかし、換算方法が無いのでこの降雨量での体感温度が、何度になるかは分からない。

 一日の降雨量が76mm、あるいは1時間当たりの最大降雨量が39.5mmで、傘なし、レインウエア無しならば、着衣は下着含め完全に水浸し(池に頭まで浸かったと同じ)と思われる。そこで、熱伝導率を見る。※参考までに山に関係する数値も集めた。

空気0.0241λW/(m・K)、水0.63λW/(m・K)、氷 2.57λW/(m・K)、大地(湿度10%)0.06λW/(m・K)、発泡ポリエチレン0.035λW/(m・K)、皮0.14-0.16λW/(m・K)、ウール0.033λW/(m・K)。
ウール以外の数値は
http://www.ohm.jp/product/tech/05.html
より。ウールはウィキペディアより。

であるが、着衣が完全に水浸し状態ならば、熱は、乾燥状態より26倍(=0.63/0.0241)放出されやすくなる。これは、26倍速く冷えることを意味する。このような状態で、風の影響があれば、更に厳しくなることは容易に想像できる。
 実際は、レインウエアを着た状態であろうが、1時間に39.5mmの雨の下では、靴は水没レベル、ザックと背中の間から滲み込むみ(ゴアテックスでも強い圧がかかれば滲み込む)、着替え無しでは危険と思われる(着干しは、体力減です)。

 このように、この時期は、最悪動けない雨が降る可能性や相当濡れる可能性が持っていることが分かる。小屋泊まりでも行動中の危険なレベルの雨に備え、ツェルトは必須と言える。
以上、「7月中旬に北海道の大雪山系へ行く」を想定して検討したが、過剰と思うか十分と思うかはそれぞれの判断によるだろう。

● まとめ
 過去の天気から、過去10年の最悪値を並べて対応することに異論もあると思う。最悪値は異常値と考え、2位の数値を採用する手もあろう。自分で担ぐ以上、重量制限がある。落とし所を自分で探すしかない。
 単独行は、自分が全てである。仲間がいれば借りることも出来るが、単独行で「あれが無い、これが使えない」では終りである。自らの行動を家の中で想像しながら、エラーがゼロになるように準備を進めたい。準備とは、このブログに記した気象関連の調査は勿論だが、用意した道具が使える状態にあるかも含まれる。例えば、ツェルトは1人で張れますか?(1人で張ったことがあるか?)、張る以外の使い方を知っていますか?そもそも袋から出したことありますか?
 それと過去のブログで何回か紹介した東京新聞「岳人」2009年10月号のトムラウシ山遭難の記事の中の一部を紹介する。助かった男性の1人(65歳)は、雨で濡れたアンダーウエアを着替え、防水対策をしても雨でシェラフが濡れてしまったので、ゴアテックスのシェラフカバーをシェラフの中に入れて寝たそうである。着替えがあっても『シェラフカバーをインナーに使う』ことが無ければ濡れてしまい、快適な眠り=体力回復は得られなかっただろう。

以上

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